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ご報告

2007年6月1日(金) 寺島実郎氏特別講演会

会場:帝国ホテル大阪「芙蓉の間」

ご挨拶

日本経済が戦後の高成長からバブルの崩壊を経て、この15年間世界の中で立ち遅れてきました。高成長のつけが参ったということです。考えてみれば第2次世界大戦後、賃金の安い労働者が昭和30年代、40年代にたくさん出てきて昼夜を問わず働いてきました。その結果、日本は世界第2位の経済大国となりました。今や戦後60年にもなると活躍された世代の方々が老齢化して参り、安い賃金労働者はアジアを始めとする新興国に奪われてしまいました。そういった中でこれからの日本は一体どうしていけば良いのでしょうか?
それを考える上で重要なポイントは何なのでしょうか。それは経済活動の根幹は人、物、技術、金、情報で構築されているということです。
1つは、低賃金労働者が少なくなった今、日本には世界で冠たる技術を持った会社が多数ありますし、技術やその開発については世界の中でも1、2位を争っています。
例えば先日ドバイへ行って参りましたがドバイは砂漠と海水しか無く真水がありません。殆どの物が錆びてしまいます。そういった中で日本の企業の技術が入り、真水の不足はありません。又、砂漠に湖を作ろうということで、これも日本の技術が入っています。
今ドバイでは世界最高の800m超えのビルを建設しています。これは関西で言えば六甲山を超える高さです。これにも日本の土木技術が携わっており、日本からの技術の輸出です。このように日本は大変な技術を持っており、もっと活用していく時代でありましょうし、この分野はまだまだ有望です。
もう1つは日本の個人金融資産は約1500兆円あります。その内半分は銀行と郵便貯金にありリスクを取らないお金です。果たしてこれでいいのでしょうか?このお金をどう活用し、循環させることができるかが大きなポイントです。昔はそのお金を日本経済の発展に使って参りましたが、これからはグローバルな世界で経済の発展に使うことが必要ですし、投資家から見ても結果として良い運用になることは間違いありません。
以上2つのポイントがこれからの日本経済を決定することになるでしょう。
そうした中でアメリカが1990年から立ち直りました。それはペンタゴンのIT技術を一般に開放し、そこで効率化社会というふうに動いてきました。アメリカのシリコンバレーという所にベンチャー企業、例えばマイクロソフト、アップル等の会社が生まれました。日本もエンジェルと呼ばれる投資家の方は結構いらっしゃいますがまだシリコンバレーのような状態ではありません。最近のヘラクレス、マザーズ、ジャスダックを見ても元気がありません。私達はそれを如何にサポートしていくかというのが大きな役目であります。アメリカのシリコンバレーは1975年にたった7人の投資家達が、技術を持ちお金の無いインド人技術者達を助けていって、今日の繁栄に繋がっています。私達はそういうものを創っていきたいと考えております。私達だけではなく良いエンジェル投資家、並びにアドバイザーの方々にもご協力をお願いしたい。そういった意味でKANSAIアントレプレナーズクラブというのは私達を含めて皆様と一緒に創らせて頂きたいと思っています。

緊急レポート

現在、香港の「パシフィック・アライアンス・グループ」にてマネージング ディレクターとしてご活躍中。パシフィック・アライアンス・グループは、ベトナムの投資会社“ビナキャピタル”の大株主でもあります。
大工原氏は、今から3年前の2004年、ホーチミン訪問以来、ベトナム関係に従事。それ以来、ベトナム訪問を重ねる中、訪越の度に成長しているベトナム経済を実感されています。ベトナムは今、新しいビルの建設が進む一方、人々は活き活きとしています。今回はご専門の投資の観点からお話を頂きました。お話の概要は次のとおりです。

◎8%成長が続くベトナム経済 その4つの理由
ベトナム経済は常に8%を超えるGDPの成長を遂げています。これは日本の高度経済成長期に通ずるものがあります。何故、持続的に8%以上の成長が遂げられたのでしょう。それには4つの理由があります。

1.
低い人件費:
1人当たりの1ヶ月の給料が日本円で約1万円〜1万3千円です。これは週に6日間、朝から晩迄働いた収入で、ベトナムの中でも高い水準です。ちなみにベトナムでは人口の75%は35歳未満で、若い人材が多いのが特徴です。
2.
文化的要素:
穏やかな人が多く、争い事を好みません。協調性のある人達で労働環境としても経営者からしても経営し易い環境です。
3.
政治的要素:
共産党一党独裁の国家ですが、共産主義の匂いは感じません。政治の安定度はアジアで安定していると言われるシンガポールに続いて安定しています。
4.
輸出入の伸び:
以上の要因をベースに、常に高い率で伸びています。

◎更なる成長の鍵を握る「インフラストラクチャー(港・道路・橋・空港)」
輸出入の増加に伴い、港の整備が必要です。港へ運んだ物は内陸部へ送る為、道路・橋・トンネルが整備されていないといけません。こういったインフラストラクチャー(インフラ:社会基盤)の構築が急務となっています。インフラ、は1度導入するとITのように1年で陳腐化するようなことがありません。そういった物から生まれてくる投資のリターンというものは、安定的なキャッシュフローに結びつきます。ベトナムでは、人口が増加し消費が拡大しているので、安定的なキャッシュフローが増えていきます。現在、インフラを全体的に言いますと道路が不足する状況です。

◎これからの成長に期待
ベトナムの高い成長率は、若く安い労働力に支えられています。その若い労働力というものは毎年新たな消費者を生み出すということで個人の消費が伸びています。こういった中で公的なお金(世界銀行やアジア開発銀行からの投資)は充分にベトナムには与えられないでもっと貧しい国に向かっています。ここの一種のギャップを民間のお金が埋めるという動きが出ていて、これは経済のインフラなので投資の観点からして非常に注目されています。

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以上、経済の高成長の背景、その中で拡充が求められているインフラへの投資の魅力についてお話頂きました。

講演

プロフィール:1947年北海道生まれ。73年早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。同年三井物産に入社。2001年日本総合研究所理事長。06年から現職。
現在、三井物産戦略研究所所長、三井物産常務執行役員、早稲田大学 アジア太平洋研究センター客員教授を兼任。

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エース証券は世界の新興勢力に関心を持っており、又技術をしっかりと見極めたベンチャー企業を育てていこう日々努力しております。お金儲けやマネーゲームでは無く、強い国際志向を持っています。こういった点を以前より寺島氏が注目して下さっております。
そういったご縁で、この度寺島氏にご講演を賜りました。
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☆ 我々の時代認識に関わる話
今生きている時代を認識することが一番難しく、主体的に生きているつもりでも大変大きな環境に取り巻かれています。一体自分たちはどんな環境に取り巻かれているのかと自分の立ち居地を確認する必要がありますが、日々の生活の中で物事の本質を考えるということが如何に難しいか、激流に揉み潰されそうになりながら並行感覚を保つというのはものすごく難しい作業です。よって時には人の話をじっくり聞いて自分の立場をしっかり確認する作業が必要だと思います。

☆ 世界経済について
今進行している世界経済の状況の中で問題意識として確認しておきたいことはグローバル化という名の元に進行している金融肥大型の経済構造です。実態経済を遥かに上回るマネー経済の拡大というものが果たして何をもたらすかということについて考えておきたいと思います。
日本経済の弱点の1つはエネルギーの外部依存という点です。日本に一体いくらで原油がたどり着いているのでしょうか。1999年に1バレル1928円で日本の港に運ばれていたのですが、今年3月には7000円代に上がっています。この8年の間に約3倍の値段になっています。何故でしょうか。これは需給関係だけでは説明できないような投機的な要素が石油の価格を揺さぶっているのです。IT革命により、コンピューターの中で短期の資金が駆け巡るオンライントレードという名の下に金融派生商品(デリバティブ)が肥大化しています。昨年この世で生み出された全ての石油をかき集めても8600万バレルです。ところがWTIで取引されている1日当たりの石油量は2億5000万バレルから3億バレルの取引をしているという実態はどういうことでしょう?つまりマネーゲームの対象のような形で石油の取引が肥大化してきたから石油価格が揺さぶられるという状況なのです。

☆ 日本の貿易構造の変化
成長の著しい中国は華僑や台湾企業等と有機的連携を深め大中華圏(グレーターチャイナ…中国・香港・シンガポール・台湾)を形成しています。日本はかつて米国が最大の貿易相手国だったが現在貿易総額の3割近くがこの大中華圏です。こうした貿易構造のアジアシフトに伴い日本海側の航路が発展し、太平洋側の神戸・横浜の港湾が劣勢となってきました。大きな理由は釜山のハブ化であり、物流を釜山に中継して大航路に繋ぐことにより効率化していったので太平洋側の主力港湾が一気に空洞化したことによるものです。

☆ アジア大移動時代
昨年日本人で中国に出国した人数は375万人、アメリカに出国したのは367万人でアメリカへ行くよりも中国へ行った人の方が初めて多くなりました。
今日、このようにアジア大移動時代を迎えつつあります。このアジア大移動時代によって中型ジェット旅客機というものが爆発的に需要が増えます。100〜150人乗り位の旅客機がバスのように30分おきに1日何便も往復するようなシャトル便の構想が極めてリアリティを持っています。実は日本の旅客機の技術基盤は世界に冠たるもので、大需要によって中型ジェット機の市場はまるで変わるでしょう。

☆ 情報の集積点を関西に作る
私は大阪の北ヤードの再開発に関係してアジア・太平洋研究所構想というものを支援しており、コーディネーターのような役割をしています。これにはエース証券も応援してくれています。大阪に無い物を考えてみましょう。大体一通りのことは既にあります。あらゆることに対して器は立派なものを持っています。しかしコンテンツの情報がありません。
例えば、パリにはアラブ世界研究所やIAEAの本部があります。よって中東やアラブ、エネルギーに関する情報を得ようと思えばパリに行かざるを得ず、情報の集積力を持っているということです。大阪へ行かなければならない情報の集積力というものが今あるでしょうか?そこでアジア・太平洋地域のエネルギー、環境、食料、金融の連携を図るシンクタンクの基盤のようなものを作る努力をしないといけません。全てが東京中心で動いているようではアジア大移動時代を迎えることは難しい。大阪はアジア・太平洋に関して地の利が有りますし、アジアへ行くにしても東京から飛ぶより1時間も早い。要するにポテンシャルを非常に持っているということです。

☆ ジュネーブモデル
ジュネーブに15の国際機関が本部を持っています。WTO(世界貿易機関)の本部もついにジュネーブに行ってしまいました。10数年前、大阪にWTOの本部を持って来るという気迫で立ち向かうべきだと日本のトップに提案したことがありますが理解を得られずジュネーブへ行ってしまいました。WTOが大阪にあったらパラダイムはまるで変わるでしょう。現在ジュネーブにはそのことによって年間40万人の国連関係者や100万人のジャーナリストや研究者が訪れています。1泊500ドルするホテルがいつも満杯です。要するに直接行かなければならないという状況を積極的に作っています。現在の日本のように無目的に、例えば2泊3日で3万円のツアー客を世界中からかき集めても観光産業の成長になりませんし、お金や問題意識を持った人が絶えず訪れているという状況を作らないと観光立国にはなりません。
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いずれにしてもこれからいろんな形で皆様と力を合わせていきたいというお言葉で締めくくられました。