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FXのリスクとは?レバレッジのコントロール次第でもリスクは増減する

FXの基礎知識 2023/7/26 2623view
FXのリスクとは?レバレッジのコントロール次第でもリスクは増減する

FXは、少ない資金で大きな取引ができるレバレッジ取引という特徴がありますが、それゆえに高いリスクも伴います。FXには様々なリスクが存在し、それらを理解し管理することがFX取引における成功の前提となります。

本記事では、レバレッジリスク・為替変動リスク・流動性リスク・信用リスク・精神的リスクなど、FXに関する主なリスクについて解説します。リスクを知り、リスクを管理する方法を身に着けましょう。

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FXはリスク管理が前提の金融商品

外国為替取引(FX)とは、異なる通貨同士の交換(売買)を行う金融商品です。FXでは、自分の持っている通貨を売って、別の通貨を買うことで、為替相場の変動による差益(または差損)を狙うことができます。少ない資金でも大きな取引ができるレバレッジや、24時間取引が可能な利便性などから、FXは個人投資家にも人気の高い金融商品です。

しかし、FXには多くのリスクも存在します。FXは、為替相場の変動によって利益だけでなく損失も発生する可能性があります。また、レバレッジを使うことで、資金以上の損失が発生するリスクもあります。さらに、通貨の流動性やFX取引を行うシステム、資金を預け入れている金融業者の信用などに関するリスクなども無視できません。

FXは、自身によるリスク管理が大前提の金融商品であるということを理解する必要があります。

レバレッジ取引のリスク

レバレッジ取引とは、自己資金に比べて大きな金額の取引ができる仕組みです。例えば、自己資金が15万円で、レバレッジ倍率が10倍の場合、150万円相当(例:ドル円1万通貨)の取引ができます。このように、レバレッジ取引は少ない資金で大きな利益を狙える魅力がありますが、同時に大きなリスクも伴います。

損失が自己資金を超える可能性がある

レバレッジ取引を行う最大のリスクは、損失が自己資金を超える可能性があることです。例として、150万円相当(例:ドル円1万通貨)の取引をした場合、価格が5%下落すると7.5万円の損失が発生し、自己資金の50%に相当します。さらに価格が下落し続けると、最終的には自己資金以上の損失が発生してしまうため、ロスカットで投資家の資金を守っています。

多くの場合、証拠金維持率が100%を下回るとマージンコールが発生し、FX会社に追加で資金を預け入れなければならなくなります。マージンコールの発生を追証(証拠金不足)と呼び、追証に応じられない場合は強制的に全てのポジションが決済されます。

また、証拠金維持率が50%を下回ると強制ロスカットで全てのポジションが決済されますが、歴史的な大事件や政治的な問題で市場の急変動が起こった際は、処理が間に合わずに自己資金以上の損失が発生することがあります。

FX取引では特にレバレッジ管理は注意すべき

FX取引では、自分の証拠金に対してどれだけの取引を行うかを決めることが重要です。レバレッジ管理は、自分のリスク許容度や目標利回りに応じて行う必要があります。一般的には、レバレッジは低くして運用するほうが安全と言えます。しかし、レバレッジを低く運用すると、利益も小さくなります。そのため、市場の状況などに応じて柔軟にポジションサイズを変更し、レバレッジを調整することも必要です。

以上のように、レバレッジ取引は大きな利益を狙える反面、大きなリスクも抱えています。レバレッジ取引をする際は、自分の資金力やリスク許容度に合わせて、適切なポジションサイズで運用することが重要です。

また、ストップロスやリミットオーダーなどの注文方法を活用して、損失をコントロールすることも必要です。レバレッジ取引は自己責任で行いましょう。

為替変動(価格)リスク

為替変動(価格)リスクは、外国為替市場で取引する際に、為替レートが予想と異なる方向に動いてしまうことで発生します。例えば、日本円でドルを買った場合、ドルが円に対して下落すると、円高となって損失が発生します。逆に、ドルが円に対して上昇すると、円安となって利益が発生します。

為替変動は、外国為替市場の参加者であれば誰もが直面するリスクです。外国為替市場は、世界中の経済や政治の影響を受けるため、予測が困難な場合が多くあります。また、外国為替市場は土日を除き24時間365日取引が行われるため、眠っている間や休日にも予想外の出来事やニュースなどによって、急激に為替レートの変動が起こる可能性があります。

為替変動は、FX取引における最も基本的なリスクであり、自身が思い描くシナリオと異なった時点で損切りを躊躇せず行うなど、常に注意する必要があります。

為替変動(価格)リスクを管理する方法

ヘッジ取引

為替変動(価格)リスクを管理する方法の一つは、ヘッジと呼ばれる手法です。ヘッジとは、自分の持っているメインポジションと逆のポジション、または別の通貨ペアでメインポジションと逆相関になるヘッジ取引を行うことで、為替レートの変動による影響を打ち消すことです。

例えば、ドル円を買ってロングポジションを保有した場合、状況にもよりますが同時にユーロドルでドルを売ることで、ドルの変動による損益をある程度相殺できます。ヘッジは、為替変動(価格)リスクを減らすことができる反面、同時に利益を得る機会も失うことになります。

分散投資

為替変動(価格)リスクを管理する方法のもう一つは、分散投資と呼ばれる手法です。分散投資とは、一つの通貨ペアだけでなく、複数の通貨ペアや資産クラスに投資することで、リスクを分散させることです。

例えば、ドル円を買ってロングポジションを保有した場合、ドル円だけでなくユーロ円や豪ドル円などの他の通貨ペアや、株式や債券などの他の資産クラスにも投資することで、一つの通貨ペアや資産クラスの値動きに左右されないようにすることができます。分散投資は、為替変動(価格)リスクを軽減することができる反面、管理や分析が複雑になります。

以上のように、為替変動は外国為替市場で取引する際に避けられないリスクです。為替変動(価格)リスクを管理する方法はいくつかありますが、どれも安全が保証されているわけではありません。自分の目的や目標に合わせて、最適な方法を模索して選ぶことが重要です。

市場の流動性低下リスク

FXでは、通貨の売買を行いますが、その際には常に反対売買を行ってくれる相手方が必要です。つまり、自分が売りたいときには誰かが買ってくれる必要がありますし、自分が買いたいときには誰かが売ってくれる必要があります。

しかし、市場に参加している人や資金の量は常に変化しています。特に市場が閉まって次の市場が開くまでの時間帯や特定の市場が休日など、市場参加者が少なくなると流動性が低下してしまい、自分が望む価格で取引できないリスクが発生します。

市場の流動性が低下するリスクが高まる要因

市場の流動性が低下するリスクが高まるのは、以下のような場合です。

  • 市場が開閉する閑散期や休日など、取引量が少ない時間帯
  • 予想外の出来事やニュースなどによって市場が混乱する場合
  • 特定の通貨ペアや銘柄に対して需要や供給が偏る場合

市場の流動性が低下した際に発生しうる問題

市場の流動性が低下すると、以下のような問題が発生します。

  • スプレッド(売値と買値の差)が拡大し、取引コストが増加する
  • 注文が約定しないか、約定価格が大きくずれる(スリッページ)
  • 注文がキャンセルされるか、一部しか約定しない(約定拒否)

上記の問題は、予想外の損失や取引コストの増加などにつながります。また、流動性低下の有無については通貨ペアによっても大きく異なります。一般的には、ドルや円など主要通貨同士の組み合わせ(メジャーペア)は流動性が高く、それ以外の組み合わせ(マイナーペアやエキゾチックペア)は流動性が低い傾向にあります。

市場の流動性低下リスクを管理する

流動性低下の影響を受けにくいようにするためには、以下のような方法があります。

  • 流動性の高い時間帯や通貨ペアを選ぶ
  • 流動性の低い時間帯や通貨ペアでは小さめのポジションサイズにする
  • 一斉休暇に入る時期や年末年始には取引しない

以上のように、市場の流動性が低下する時期や取引量が少ない通貨ペアを避けるだけでも、ある程度は流動性リスクを回避することができます。また、年末年始などのように流動性が低くなる上に取引ができない期間は、取引できるうちにポジションの調整を行うことでリスクを回避できます。

ロスカットルールのリスク

FXにおけるロスカットは、自己資金に対する損失が一定の割合を超えた場合に、強制的にポジションが決済されるルールのことです。国内FX業者の多くは、証拠金維持率が50%を下回った場合に全てのポジションが自動的に決済されます。

市場の急変動や流動性の低下などによって大損害を負ってしまい、自分が望まないタイミングや価格でポジションが決済されるなど、ロスカットが正常に機能しないリスクは定期的に発生しています。

例えば、買いポジションで保有しているドル円が急激に下落すると、ロスカットラインに達する前に逆指値で決済されると思うかもしれません。しかし、市場の流動性が低くなっていると、自分が注文した価格で約定できなかったり、数円以上のスリッページが発生したりする可能性があります。その結果、ロスカットラインを下回る価格でポジションが決済されることもあります。

預入資金以上の損失でロスカットされないために

一般的に、マイナー通貨ペア(トルコリラ円や南アフリカランド円など)はメジャー通貨ペア(ドル円やユーロドルなど)よりも値動きが激しく、流動性も低いため、レバレッジが高いと思わぬロスカットリスクが高くなります。

また、主要市場が閉まっている時間帯や重要なニュースが発表される時間帯は、市場の変動や流動性が不安定になるため、マイナー通貨であればあるほど値が飛んだりグレーアウトして取引不能になり、証拠金以上の損失額でロスカットされるリスクが高くなります。

ロスカットされるリスクを管理する方法

低レバレッジで運用する

ロスカットのリスクを管理する方法の一つは、運用時のレバレッジ倍率を低くすることです。例えば、自己資金が10万円で、レバレッジ倍率が10倍の場合、100万円相当(例として1万通貨)の取引ができます。1万通貨での取引の場合、価格が5%変動すると自己資金の50%である5万円に相当する損益が発生し、ロスカットラインに達する可能性も高くなります。

逆に、レバレッジ倍率を5倍や2倍などに低くすると、同じ自己資金でも取引できる通貨数量が減りますが、価格変動による影響も小さくなります。そのため、ロスカットラインに達する可能性も低くなります。

ストップロス(逆指値)注文を設定する

ロスカットのリスクを管理する方法のもう一つは、逆指値注文でストップロスを設定することです。逆指値注文とは、指定した価格以下(または以上)になったらポジションを決済する注文のことです。

例えば、ドル円を買った場合に下落して損失が拡大することを防ぐ目的で、あらかじめ決済したい価格を指定しておくことができます。逆指値注文は、ロスカットラインに達する前に損失を確定させることができますが、市場の流動性や変動によっては、指定した値よりもさらに損失が出る方向の値で約定する可能性もあります。

以上のように、ロスカットは外国為替市場で取引する際に証拠金保護してくれるルールですが、同時に想定外の大きなリスクも伴います。重要なのは、レバレッジが高いとリスクが高まるということです。

FXにおける取引システムのリスク

極稀に、FX会社が提供する取引システムなどに不具合や障害が発生することがあります。具体的には、FX会社のサーバーがダウンしたり、レート配信がグレーアウトして止まったり、流動性が低いために注文が正しく処理されなかったりするなどです。自分の意思とは関係なく、ポジションを決済できなかったり、注文が約定しなかったり、資金以上の損失が出るリスクとも言えます。

例えば、自分がドル円を買ってポジションを保有している場合、ドル円が上昇して利益が出ている間に決済したいと思うかもしれません。しかし、FX会社の取引システムに不具合や障害が発生していると、決済注文が通らなかったり、遅れたりする可能性があります。その間に、ドル円が下落して損失が拡大することもあります。

異常事態の場合、レート配信が完全停止することもある

スイスフランショックやフラッシュクラッシュのような異常事態の場合、FX会社の取引システム上のレート配信自体がグレーアウトしてしまい、通貨の売買などができない状態に陥ることが稀にあります。

このような状況下では、預け入れている証拠金以上の損失が発生していることが多く、大抵のハイレバレッジトレーダーが負債を抱えて退場する事態になっています。そのため、何の通貨ペアを取引するのか、レバレッジはどの程度で運用するのか、複数のFX取引口座は開設しているか、などのルール作りをすることも求められます。

取引システムのリスクを管理する方法

FX会社を複数選ぶこと

FX会社の取引システムリスクを管理する方法の一つは、FX会社を選ぶことです。FX会社の取引システムの安定性や信頼性を確認することや、複数のFX会社を利用することで、一つのFX会社に依存しないようにすることができます。ただし、FX会社を選ぶ際には、取引コストやサービス内容などの他の要素も考慮する必要があります。

自分の環境を整えること

FX会社の取引システムリスクを管理する方法のもう一つは、自分の環境を整えることです。インターネット回線やパソコンやスマートフォンなどの機器の状態をメンテナンスすることや、バックアップや充電器などを準備することで、自分の環境に起因する不具合や障害を防ぐことができます。

以上のように、FXにおける取引システム周りのリスクは、基本的に外国為替市場で取引する際に避けることは難しいです。万が一のためにも、複数のFX会社で取引できるように口座を作成しておくことが重要です。

FX業者などの信用リスク

FX取引における信用リスクは、取引先となるFX会社の信用状況によって損失が発生します。例えば、FX会社が破綻・倒産してしまい、自分が預けた証拠金が戻ってこなくなる場合や、FX会社の社員などが横領して顧客の資金がなくなるなど、予想外の損失を招いたりする場合です。

予期せぬ信用リスクを回避するためには、FX会社の選び方が重要です。金融商品取引法の登録を受けている業者であることを必ず確認し、業者の財務状況やカバー取引先の信用格付などを慎重に判断してください。金融庁から金融商品取引業として認められていない海外業者を利用する場合、信用リスクなどに巻き込まれる可能性が非常に高くなるので注意が必要です。

信託保全で最低限の安全性は確保できる

FX会社の信用リスクを避けるためには、投資家から預かった証拠金などが信託保全されて管理しているか確認するのが良いです。

信託保全とは、投資家から預かる証拠金とFX会社の固有資産を明確に区分し、管理することです。これにより、万が一FX会社が破綻した場合でも、投資家から預かっている証拠金を投資家に返還することが可能となります。

信託保全は、資産の管理法としては一番安全な方法とされており、FX業者を選ぶ際の一つの指標とも言えます。国内のFX業者では、金融商品取引法に基づき信託保全が義務化されていますが、海外のFX業者では信託保全を行っている会社は少ないです。海外のFX業者を利用する場合は、リスクが非常に高くなるでしょう。

FX取引は様々なリスクを伴うことから、投資者保護のために証拠金制度(レバレッジ制限)やロスカットルールなどが設けられています。FX取引の仕組みと取引に伴うリスクを十分に理解したうえで、自らの責任で適切な投資判断を行ってください。

通貨間の金利変動リスク

FXでは、異なる通貨間で金利が異なるため、スワップポイントというものが発生します。スワップポイントとは、取引した通貨ペアの金利差に応じて、翌日に受け取るまたは支払う金額のことです。

2023年7月25日時点で、日本円と米ドルの金利差は約5.00~5.25%です。この場合、日本円を売って米ドルを買うと、約5.00~5.25%相当のプラススワップポイントを受け取ることができます。逆に、日本円を買って米ドルを売ると、約年間でのマイナススワップポイントを支払うことになります。

しかし、金利は常に一定ではありません。市場の状況や各国の金融政策によって金利は変動します。そのため、スワップポイントも変動する可能性があります。

スワップポイント逆転もあり得る

稀に、通貨間で金利差が逆転するという現象が起こることがあります。数十年単位で見た場合に、豪ドルと米ドルなどの通貨間では金利差の逆転が発生しています。

例えば、もし日本円の金利が米ドルの金利よりも高くなったとしたらどうでしょうか?日米金利差が逆転した場合、日本円を売って米ドルを買うと、マイナスのスワップポイントを支払うことになります。つまり、スワップポイントが逆転することになります。

上記のように、FXでスワップポイント狙いの運用を行う場合、通貨間の金利変動リスクは決して無視できません。高金利通貨を買い、低金利通貨を売ることでスワップポイントの収入を得ることを目的とした取引を行っていた場合、通貨間のスワップポイント逆転が発生すると、予想外の損失を被る可能性があります。そのため、スワップポイント狙いで取引する際は、政策金利の動向に注意して適切なリスク管理を行うことが重要です。

その他のFX取引に関するリスク

FXには、レバレッジ取引・為替変動・流動性低下・ロスカット・金利変動・業者の信用リスクのほかにも、知っておくべきトレーダー自身の心理的・精神的なリスクが存在します。

FX取引においては、市場の動きや経済指標だけでなく、トレーダー自身の心理状況も重要な要素です。しかし、人間は感情や思考に影響されやすく、理性的な判断ができないことも多々あります。その結果、FX取引で様々な心理的なリスクやバイアスに陥ってしまう可能性があります。

以下では、FX取引をする上で人的リスクとなる8つの大衆心理を確認していきましょう。

プロスペクト理論

プロスペクト理論とは、利益を得る嬉しさよりも損失の回避を重要視する心理的傾向を指します。例えば、100万円の利益が出たときよりも、100万円の損失が出たときの方が感情的にダメージを受けるということです。

プロスペクト理論に該当する心理状況になっていると、利益が出ているポジションを早めに決済してしまったり、損失が出ているポジションを損切りできずに放置してしまう傾向につながります。利益を最大化するという本来の目的とは逆の行動になるため、プロスペクト理論の心理状況を回避できる方法として、機械的なエントリーとエグジットルールが必要です。

確証バイアス

確証バイアスとは、自分に都合の良い情報だけを集めようとする心理的傾向を指します。例えば、自分がドル円の買いポジションを持っている場合、円安になる要因やニュースだけに注目して、円高になる要因やニュースは無視または軽視してしまうということです。

確証バイアスに該当する心理状況になっていると、自分の保有しているポジションや判断・予想に固執してしまい、市場の変化や反対意見に対応できなくなる危険性があります。柔軟な思考や判断力を失ってしまうため、偏った情報収集や避けて客観的に見ていくことが求められます。

後知恵バイアス

後知恵バイアスとは、結果がどうなっても自分の判断が正しかったと思い込んでしまう心理的傾向を指します。例えば、自分がドル円の買いポジションを持っていて円安になった場合、「思った通り、やっぱり円安になった」と自画自賛する一方で、円高になった場合、「大丈夫、円高は一時的なはず」と言い訳するということです。

後知恵バイアスに該当する心理状況になっていると、自分のミスや失敗から学ぶことができなくなり、同じ過ちを繰り返す可能性があります。取引経験による成長や改善の機会を逃してしまうため、反省や分析を怠らないようにしましょう。

正常性バイアス

正常性バイアスとは、異常事態が起きても正常の範囲内と判断してリスクを過小評価する心理的傾向を指します。例えば、大きな地震やテロなどの災害や事件が起きても、「そこまで相場に影響は出ないだろう」「すぐに元通りのレートになる」などと思ってしまうということです。

正常性バイアスに該当する心理状況になっていると、災害や事件による市場の急変や異常な動きに対して適切な対処ができなくなり、大きな損失を被る可能性があります。考えることをやめて、現実を直視することを避けてしまうため、常にリスク管理を意識するようにしましょう。

コンコルド効果(サンクコスト)

コンコルド効果(サンクコスト)とは、投資した費用や分析時間などの労力を惜しんで継続してしまう心理的傾向を指します。例えば、自分がドル円の買いポジションを持っていて円高になっても、「損切りがもったいないから売らない」「もう少し待てば戻るはず」などと思ってしまうということです。

コンコルド効果に該当する心理状況になっていると、保有ポジションの含み損を際限なく拡大させてしまい、ロスカットにまで追い込まれる危険性があります。損切りが苦手な方は、投資費用や分析時間などを惜しんで止められない心理状況に陥ってしまうため、損切りのルールやタイミングを決めておくことが重要です。

アンカリング効果

アンカリング効果とは、先に与えられた情報(数字)が以後の判断基準に影響を及ぼす心理的傾向を指します。例えば、自分がドル円の買いポジションを持とうとしている場合、レートが150円だったときよりも140円だったときの方が安く感じてしまうということです。

アンカリング効果に該当する心理状況になっていると、レートの値ごろ感だけで適当に売買してしまうようになります。上昇トレンドなどの押し目であれば問題は有りませんが、市場の動向やトレンドに関係なく自分の主観で判断してしまうため、値段で決めずに分析することが必要です。

認知的不協和理論

認知的不協和理論とは、矛盾した考えを持った際に自分の考えを正当化する心理的傾向を指します。例えば、本当はFXでお金を儲けたいのに含み損を抱えていると、矛盾している状態が発生してストレスを感じ、結果的に誤った判断をしてしまうということです。

認知的不協和理論に該当する心理状況になっていると、自分の考えや行動に合理化や言い訳をつけてしまい、問題の本質や解決策に目を向けられなくなる可能性があります。自分に都合のいい言い訳をしてしまい、感情や思い込みに振り回されてしまうため、客観的な視点やデータに基づく判断を心がけるようにしましょう。

ヒューリスティック(直感的理論)

ヒューリスティック(直感的理論)とは、経験・先入観に基づいて物事を直感的に判断してしまう心理的傾向を指します。例えば、「◯◯は円高になりやすい」「夏場は相場が荒れやすい」というような経験則や先入観に頼って取引してしまうということです。

ヒューリスティックに該当する心理状況になっていると、市場の状況やトレンドに関係なく自分の直感で判断してしまうため、失敗する可能性が高くなります。経験豊富であれば良いですが、先入観に頼ってしまうのはリスクなため、常に論理的かつ客観的な分析を行うことが重要です。

トレーダーの心理的なリスクの総括

本章では、プロスペクト理論・確証バイアス・後知恵バイアス・正常性バイアス・コンコルド効果・認知的不協和理論・アンカリング効果・ヒューリスティックなど、8つの大衆心理を紹介しました。

FX取引に影響を及ぼす心理的傾向には、利益を最大化するという目的とは逆の行動を引き起こしたり、自分のミスや失敗から学ぶことができなかったり、市場の変化やリスクに対応できなくなるなどの危険性があります。利益から遠ざかってしまう心理的傾向に陥らないよう、気付いて克服することがFX取引の成功にとって必要不可欠です。

トレーダーは、自分の感情や思い込みに振り回されず、客観的な視点やデータに基づく判断をすることが重要です。また、自分の判断や予想に固執せず、市場の動向や反対意見などの情報にも耳を傾けることが必要です。自分のミスや失敗から反省や分析を行い、成長や改善の機会を逃さないこと、常にリスク管理を意識して損切りのルールやタイミングを決めておくと良いでしょう。

自分自身の心理状況を把握した上で、コントロールすることがFX取引の成功にとって必要不可欠です。上記の8つの大衆心理を参考に、自分の心理状況を見直して意識するように心がけてみましょう。

まとめ

本記事では、FXに関する主なリスクとして、レバレッジ取引・為替変動・流動性低下・ロスカット・金利変動・業者の信用リスク・精神的な問題について解説しました。

FX取引を行う際には、様々なリスクがあるということを念頭に置き、自分に合った最適な取引方針や戦略を立てることが大切です。市場の状況や保有しているポジション内容に応じて、柔軟にリスク管理を行うことも必要です。

また、FX取引で勝ち続ける上で、最もリスク管理が難しいと言われているのが、プロスペクト理論に代表される「損大利小」です。真のリスクは自分自身であるということも知り、心理的影響を受けにくいように取引を行うことも大切になります。

FXはリスク管理が前提の金融商品であることを忘れずに、安全かつ効果的な取引を行いましょう。

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